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徴兵制 集団的自衛権行使容認の先にあるもの

 その昔高校生だったころ、「赤紙が来たらどうする?」というテーマで友人と議論したことがある。
 戦後に生まれた一人として、このことが自分の身にふりかかることはなかったが、集団的自衛権行使が、ときの政府の意向によっていとも簡単に容認されてしまうことが分かったいま、孫子の世代の行く末を考えると決して安閑としてはいられなくなってきた。

 防衛大学への進学を志すほどの意識」を持った人たちはともかく、自衛隊に志願する一般の若者すべてが海外での戦闘に参加することは想定していないのではないだろうか?
 想定していないどころか、海外に行くことなどあり得ないことと考えていた若者も少なくないはずである。
 実際、身の周りには免許や資格を取得することを目的に志願した友人の少なからず存在したが、彼らもとうに退官したに違いない。

 防衛庁長官官房防衛審議官、防衛研究所長を歴任した現新潟県加茂市長小池清彦氏は、集団的自衛権行使容認による徴兵制復活の可能性を指摘して警鐘を鳴らしている。
 つまり、自衛隊を志願する若者が減って兵員を維持できなくなり、徴兵制を採らざるを得ないと言うのだ。

 自衛隊ではいわゆる「戦死者」は皆無だが、平均して年に11人ほどの自衛官が殉職していて、立場上その慰霊式典に列席したときの心痛をテレビ朝日の取材に対して切々と語っている。
 家庭を持つ自衛隊員は少なくないゆえに、年に一度の式典でけなげにふるまう遺児たちの姿に涙を禁ずることができなかったと氏は回想しているのだ。

 従軍慰安婦や南京虐殺などいまだに曖昧な歴史問題もあるが、日本は先の大戦でこともあろうにナチスと手を組んで、一時的とはいえ他国の領土を占領したことは紛れもない事実である。
 天皇陛下が毎年そのことに触れ、世界平和を希求することを世界に向けて発信しておられるように、日本は大戦を遂行したことの反省に立って、不戦を誓ったのではなかったか。
 その日本に、かっての徴兵制のようなものが復活するかも知れないなどと誰が想像しただろう。

 決してそのようになることを許してはならない。 

 平和憲法のもとではPKOなどの平和活動でさえ、志願した自衛官だけが派遣されるというから、本人の意思によらず上官の命令だけで他国に赴くことなどまず考えられなかった。
 しかし、どこの国にも頼まれないで集団的自衛権行使を自ら容認した以上、これからは違う。
 集団的自衛権の行使のための関連法の整備が完了したら、海外派遣は自衛隊の通常の活動に組み入れられることになるのだ。 

 当初イラクやアフガンのような戦闘に参加することは絶対にありえないと高言していた安倍くんだが、集団的自衛権ばかりか、自衛隊イラク派遣でタラウマを背負った外務官僚や一部の自衛隊出身議員のに押されて集団安保にまで踏み込んだ結果、遠くない将来に自衛隊が海外での戦場に派遣される可能性はにわかに高まった。

 それにしても、多数を背景に重要な政策課題を好き勝手な方向にあやつっているいまの政権には、呆れるほかはない。
 予想した以上に頼りない民主党に懲りた国民が経済回復を願って投票した結果、衆参両院で大勢を占めた自民党・公明党政権は、あろうことか秘密保護や集団的自衛権など公約にありもしない重要課題を次々に都合よく決めてしまった。
 憲法解釈変更、集団的自衛権・集団安保にまで政権が踏み込むことを予想していた自民党支持者は、どれほどいただろう。

 昨今の日米関係を考えるまでもなく、自ら解釈改憲を強行した政府が、万一米国から自衛隊派遣を要請されたら、拒否する根拠がないばかりか拒否できるはずもないことは国民誰しもが知るところである。
 かくして、日本とは何の利害関係もない地域や国に自衛隊員が不幸にも派遣される道が着々として開かれようとしている。

 ここでもう一度とどまって考えてみよう。
 そもそも、軍隊ではなく専守防衛に特化した「自衛隊」に、アフガンやイラクのような国々での戦闘場面に十分耐えられるような兵站能力や装備が備わっているのかという疑問がある。

 根本にあるのは、与党政権を担う手合いの不見識だ。
 集団的自衛権行使容認を決めた安倍くんは、「これで日本に戦争を仕掛けようとする企てを防ぐことができる」と、あたかも戦前の政治家かとも思しき見識を披歴していたが、現代の政治家の認識として疑念を抱くだけでなく、その思考回路も疑いたくなる。
 冷戦が終結したいまでもウクライナに見るような民族紛争は後を絶たないが、いまどき他国を攻撃しようなどと企む国家があるだろうか。 
 時代錯誤も甚だしいというほかはない。

 隣国を仮想敵に設定して、集団的自衛権行使に防衛力不足のよりどころを求めるのではなく、成人していない隣人に大人としての態度で対話を促すことこそ現代の政治家に求められることだと思う。
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