吉田修一さん原作で、大森立嗣監督による
さよなら渓谷がモスクワ国際映画祭で審査員特別賞を受賞したというニュースが飛び込んできました。
今月から公開されている評判の高い映画で関心を抱いていた作品ですが、国際的にも高い評価を得ました。
この作品の底には、二つの実在した事件が横たわっています。
秋田連続児童殺人事件と帝京大ラグビー部集団暴行事件です。
前者では、後に犯人とされた人物がメディアの前で連日大胆な言動を繰り広げましたが、このイメージは立花里美のそれと重なります。
また、後者の事件はそのまま本作品の主人公尾崎俊介に重なりますが、かっての暴行事件での被害者と加害者との奇妙な同居生活というユニークな設定は、一見ありそうもない現実のようでありながら不思議な虚脱感を覚えさせます。
実際、帝京大の事件では被害者の女性は加害者とされた1人と知り合いであったことが知られています。
もちろん、小説のような同居生活は現実にはありませんでしたが、被害女性は悩んだ果てに接点をも模索していたとも
伝えられています。
交錯した被害者心理を考えると、憎む気持ちと同居する別な感情が湧くのかも知れないとさえ思わせる作品です。
幼児失踪事件を取材する記者のクルマの運転手からたまたま聞いた過去のできごとをきっかけにストーリーは展開しますが、やはり焦点はどこまでも被害者と加害者とのストックホルム症候群ともいうべき愛憎劇です。
2013-06-30 10:41
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