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杉花粉と重なる子供時代の原風景

 新潟の冬は雪深い山村に産まれ、物心ついたときに話題になっていたのは人里はなれた奥地福島県境に横たわる秘境ともいうべき山間地のダム建設であった。いまから、60年近くも昔の話だ。しかし、その下流には;ダムが完成したあとの、大学浪人していた昭和40年のころでさえイワナがヤスで突けるほどの渓流がまだあった。

 ダム建設で田畑をなくした地元民は新しく手に入れた土地に、競って木の苗を植えた。実父もその一人だった。 自転車の前かごに乗せられ、家から5kmもあっただろうか山あいにある赤土の荒れた新開地に植わった杉苗を、いまでも思い出す。
 いまにして思えば、あのときの杉が花粉の供給源になっているのだろう。

 そのとき父親が囁いた言葉を忘れてはいない。
 この木が大きくなったら、材木として売るんだぞ

 その後、子供にも恵まれながら都会に定住したあと、老いた父と共にこの杉林の姿を見る機会があった。
 15メートルもの丈に育った杉林、しかし根元近くで曲がってしまって材木としての価値は無いに等しい。

 この杉たちが、空しく花粉だけを放っているのかと思うと不憫にさえ思える。

 建築材料という視点で見れば、杉材は曲がっていようといまいと、松やヒノキに劣らず杉独特の風合いを備えていることを思い出す。

 手に採った杉ヤニの、あの粘っこい手触りと香りが懐かしいですね。

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